こんばんは。
みなさんは「農村RMO(Region Management Organization:地域運営組織)」という言葉を耳にしたことはありますか?
人口減少や高齢化が進む中山間地域において、住民自らが主体となり、地域の生活や豊かな農地を守るための組織づくりのことです。
農林水産省主催の令和6年度「ディスカバー農山漁村の宝」で農村RMO特別賞を受賞した、岡山県真庭市吉地区の取り組みについて、行政視察へ行ってまいりましたのでご紹介します。
1. 厳しい現実からのスタート:吉地区ってどんなところ?
取り組みの舞台となるのは、岡山県真庭市の最南端に位置する「吉地区」です。
県南からの一般道経由の入口にあたる場所ですが、少子高齢化によって、深刻な過疎化と地域の担い手不足に直面しておりました。
2. 3つの「転機」が地域を変えた!吉縁起村の歩み
吉縁起村が今日にいたるまでには、活動を大きく加速させた3つの転機(ステップ)がありました。
【転機1】短期・中長期目標の明確化
まずは「岡山県美作国創生公募提案事業」への採択をきっかけに、「この地に住んでいて楽しい!」の実現に向けて目標を定めました。
- 短期: 観光化に向けた「活動拠点」と「訪問スポット」の整備
- 中長期: 特産品開発、地域資源の発掘、「吉縁起村新聞」の定期発行による丁寧な地域合意形成。まずは活動が認知されることから始めました。
【転機2】中山間直払協定への参画
令和3年度、岩坪協定・林協定が統合し、広域化に貢献。吉縁起村が事務や集落強化加算、特産品担当を一手に引き受けることで、事務費による安定した活動資金の確保に成功しました。これにより、「農用地保全」「地域資源の活用」「生活支援」が一体となった持続可能な基盤が整いました。
【転機3】「農村型地域運営組織(RMO)」への充実
令和4年度には農林水産省と真庭市の指導助言を受け、住民ワークショップを経て「吉地区将来ビジョン」を策定。30年後まで農業後継者が安定的に存在することが判明するなど、未来への希望がデータとしても裏付けられました。
3. ここがすごい!農村RMO事業3年間の具体的な成果
平均年齢64歳の組織とは思えないほど、吉縁起村はデジタルや新しいシステムをどん欲に取り入れ、わずか3年間で以下のような素晴らしい成果を上げています。
① 農業のデジタル化と耕作放棄地の解消
ドローンやリモコン草刈機などのデジタル技術を導入し、「農振地」への参入を促進。中山間に7名が新たに加入したほか、23耕作地が増加。3年間で約3haの新規耕作地が増加し、青々とした美しい農地が蘇りました。
② 移動の足を確保!デマンド交通の運営
地域の独居老人や交通手段のない住民のために、交通協議会が市の助成金を受けながらデマンド交通(予約型乗り合いタクシー)を本格運行。さらに「貨客混載」の取り組みもスタートし、物価高騰などの厳しい運営状況の中でも住民の「移動の自由」を守っています。
③ 画期的な「無人ストア(ポプラ)」の導入
買い物難民を救うため、NTTなどと連携して「無人ストア」の実証実験を開始。初期は高齢者のスマホ決済登録の難しさや、管理金といったハードル、既存システムの使いづらさによる苦情もありました。
しかし、令和7年11月にはPOSシステムを導入した新たな「無人ストア(ポプラ)」へとリニューアル経営!9月〜10月だけで75,000円の売上アップを記録するなど、地域に不可欠なコミュニティ兼お買い物スポットとして大好評を得ています。
- 「地域計画」と「地域管理構想」の融合:農林水産省の新田農業政策研究所上席研究官や、国土交通省の斎藤課長補佐が数回にわたり現地を視察・提言。GIS(地理情報システム)や「ため池」の環境DNA調査、かいぼり調査を駆使し、将来の最適な土地利用や区割り案を計画しています。
- 次世代の地域資源・次世代燃料「カメリナ」の栽培:持続可能な社会(脱炭素)を見据え、商品作物「カメリナ」の実験的栽培に成功! カメリナから取れるオイルはオメガ3・6・9が豊富で、悪玉コレステロール減少や美肌・アンチエイジング効果が高く、風味も抜群。さらに、その油はSAF(次世代の航空機用・持続可能な航空燃料)としてCO2削減に貢献する地球に優しい作物です。
5. 今後の課題と展望:自立した組織へ
これからの10年に向けた吉縁起村のネクストステップは、さらなる「経営の安定化」と「次世代へのバトンタッチ」です。
- 無人ストアの他地区展開: ポスシステムによる効率化ノウハウを市内の他地区へも広げ、広域での収益確保を目指します。
- 次世代人材の育成: 中山間協定の後継者は確保できているため、今後はNPO法人としての後継者育成に注力します。
- 自立運営に向けて: 総務省の「指定地域共同活動団体」の認可を取得し、市の委託事業を地域の「農業関連事業」「活動の取りまとめ団体」へと集約。ネットを駆使して活動の販売実績を向上させます。
- 特産品ブランド「翠王(すいおう)」の拡大:実験育成に成功したさつま芋「翠王」を活用した、「翠王茶」「翠王ようかん」「翠王アイス」などの特産品開発をさらに進め、地域の経済を潤すブランドへと育てていきます。
まとめ
平均年齢64歳の小さな集落が、ドローンを飛ばし、無人ストアを経営し、宇宙や飛行機の未来を支える植物「カメリナ」を育てる――。吉縁起村の姿は、全国の過疎に悩む地域にとって、大きな希望の光です。
今後のますますの発展にも注目してまいります!
それでは、また明日!
